このねこたち、2003年の夏にわたしのブログ「ヒツジに感謝」に初登場しました。ブログを見て応援して下さる方達に「じゃー、こんなの作って見せる!」といろんなものを作っていたんですが、そんなブログを飛び出して売ることに。
応援してくれた方達に、本当に感謝しています。
さて、猫たちの販売をするんですが「なぜ手のひらサイズなのか」を説明しておこうかと。それと今まで、多くの方達から「売りませんか?」という問い合わせを多くいただいたにも関わらず、なんとなく出し渋っていた理由も、改めてここに書いておこうと思います。
手芸好きの方や、かわいい物好きの方の中には、この猫たちのことを酔狂で買って下さるありがたい方がいてくださるかもしれません。かわいいものの価値をご存じの方や、羊好きの方が買って下さるのはとてもうれしいし、とてもありがたいです。どうぞ、かわいがってあげて下さい。
でも、かわいいものが大事だ、とは思わない人や、
いろんなものを買ってもすぐに捨てちゃう人
それから
普段「とても忙しい」が口癖の人
そんな人のためにも。
15年くらい昔なんですが、友人に大変パソコンに詳しい人がいました。
へたするとまる3日くらいずーっと座ったきり、というくらいPC好き。
当時はコンパイルに10時間くらいかかっちゃって、実行するにはさらに16時間くらいとか。「すごいものを見せるから」と言いながら38のEnterキーを押すと、延々と続く二重螺旋の画像処理自動プログラムが…全てロードされ、コンマ5ミリくらいのドットラインが1本いっぽんチリッチリッ…としんぼう強く描かれて15インチの液晶画面を埋め…尽くした…かな…まだ終わんないのこれ…には次の日の夕方までかかる。
そんなことやっていました。
当時アホだった(今でもアホなんですがそれは置いといて)わたしが見ていたのは…「PC周りがあまりにも殺風景だ」ということぐらいでした。「そんなことよりローグ(当時はやっていたゲームプログラム)やりたいのー」なんてロード中のプログラムを中途でブチッなんて強制終了して壊したり(あれは悪いことしました)。
その人にはもうおあいしていないし、おそらくそんな話を覚えてはいないと思いますが、
「PCや本棚の脇に飾るような、邪魔にならないものをあげたい」
そんな約束…というか、話がありました。
そんな話もすっかり忘れられて、歳月はどんどん流れて10年後。
PCについては音痴だったわたしもPCで仕事をするようになったし、かなり切羽詰まったことやったり、厳しい仕事なんかも乗り越えたりして。いろんなものを自分のためにニードルで作るようになった時に、そのときの約束…というか、話をふっと思い出しました。
これからPCを使っていく人はどんどん増えるし、話をする速度でキーボードをタイプする人が当たり前になるでしょう。どんどん新しい技術を生み出して、わたしが見たことのないすばらしい世界を見ることができる人たちがどんどん増えるでしょう。力ある人なら一見無機質に見える“波”でも次々と乗り換えていけるだろうし、いろんなことをサッパリさせて遥か遠くに行くことができる。
でも、迷子になる人もいるかもしれない。
次々と変わっていく中では、あらゆる無駄を省いて身の回りが常にすっきりしていないと大量の仕事もこなせないです。いろんなことをどんどん使って、用のないものはキッパリと捨てていかないと、あっという間に大量の事柄を抱え込むことになる。PC自体も消耗品。
でも、自分さえ消費しちゃう人がいるかもしれない。
だから、普段は小さくて邪魔にならないところにいて、画面から視線をふっと外した時、ものすごい勢いで流れていく想念を追いかけて迷子になりそうな、そんな時に
小さいけど、ちゃんといる。
流されない普遍的なあなた
使い捨てにならないあなたが
確かに存在する

そんなことを力強く言い続けてくれるもの
一見無駄だけど、愛らしいものを常に側においていたい
そんなものを作りたい
10年以上前、力ないわたしは遠くには行けなかったんですが、
その代わりに心を支えるために小さな道具を。
“風”をがんばって追いかけていく人のために、
些細だけど愛らしいものを作ろう、
それが「手のひらサイズ」の理由です。
わたしがいる北海道の十勝は何もない場所です。よく道に迷います。迷った時には畑の真ん中で空を見上げます(途方に暮れているときが多いんですが)。
遠くまで広がる何もない草原と流れていく雲、100キロも離れたところから運ばれてくるごくかすかな海の塩の気配がふっとする、そんな本当に何もないある意味「自分しかない」場所と、遥かな天空を突こうと伸びていく数多くのビルの中、ブラインドを閉めた蛍光灯の下で黙々と抽象的な事柄をやり取りする、そんな「もしかしたら自分を失いかねない」場所をつないでくれる、「自分の有り様」を支えるためのモノ。
そんなものが傍にあってほしい、そう考えたりします。
「超高速で流れていく時代にいる人間を支えるための、普遍的な道具とはどうあるべきか」そんな問いかけに対するわたしなりの答えのひとつです。
最初は自分のためにつくりましたが、
「手芸とか手作りとかに縁がないよ」なんて思っている人たち…
自分を見失いそうなくらいにものすごくがんばって仕事をしている
そんな人の側にも置いてもらいたいんです。
もちろん、かわいいものが大好きで、長く愛してくれる人のためにも。
この猫たちは、最初そんな理由で作られました。
だから、そんなことのために作ろうと思っています。
10年以上、という年月をかけて大分遠回りしちゃったし、捨てられるものは作りたくないし売りたくない、そんなことでもかなり悩みました。
更に言うと、この答えを証明するために毛を洗って草集めて煮込んで、ほぐしたりと、いろいろな手間を1年もかけて…
出来上がるのが…

…このちっこい手のひらサイズかよ!!
ちゃっちいぜ!
アナログだぜ!
…というバカみたいな答えなんですが。
しかも、この答えは証明するのにも時間がかかりますが、
帰結ではなかったりします。
「用の美」にはまだまだ遥かに遠いし、捨てられてしまうはずのマテリアル-羊毛でどれだけいいものを作れるか、そして伝統のないまったく新しいニードルフェルトが、手芸やお楽しみの部分をこえてどこまで残るものを作っていけるか、といういろんな挑戦にたいする最初の一歩。
それでも、出した答えは答え。
まだまだちゃっちいし、時代の流れと逆行しているのは百も承知なんですが、
今のところこれしか行き着かないので、
もう少し先に進んでみようと思います。
くじけそうになっているのが見えたら尻をたたいて下さい。
長々と書いちゃったけど、そんなわけです。
気に入って下さったら、どうぞお手元に置いて下さい。
「はこねこ」「ふくろねこ」は通販マガジン「スロウ」vol.6でお届けしています。
北海道内のローソン、十勝管内の書店で購入できます。
道外の方は雑誌をお取り寄せできるそうです。
売れても売れなくても、ちゃっちくてちっこくても、
真剣に、そして一生懸命作りますので、どうぞよろしくお願いします。
お届けするものは
あなたが手放さない限り
ずっといい友達になってくれること、請け合います。